甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。

田代くんが教えてくれた和食屋さんは、こじんまりとしたお店で落ち着く雰囲気のお店だった。

「すみません、肉じゃがを一つと……あと、だし巻き卵も一つお願いします。それとウーロン茶も。田代くんは飲み物頼む？」

「俺もウーロン茶で」

他にも料理を数品頼んで、一旦注文を終える。

店員さんが厨房に戻った後に、私は田代くんと顔を合わせた。

「田代くん、お酒頼まなくて良かったの？」

「だって、末永飲めないだろ」

「田代くんだけ頼んでも良かったのに」

「いいんだよ。今日は会社の飲み会じゃないし」

田代くんはそう言いながら、おしぼりで手を拭いている。

当たり前のようにそういう気遣いが出来るのに、いつも田代くんは自分のことを「優しくない」と言うのだ。

料理が届いた後も、私たちはいつも通り仕事の話や世間話のような当たり障りのない話を楽しんだ。

嫌なことやプライベートのことに触れない田代くんはやっぱり話しやすかった。