甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。

「動かなくていいよ。買うのやめたし」

「なんで……!?」

「氷は別に今すぐに必要だった訳じゃないから。それに氷持ってたら、すぐに帰らなきゃいけなくなるから」

そう言って、田代くんが飲み物の棚から280mlの炭酸ジュースを二本取った。

「末永って確かお酒飲めなかったよな? 炭酸は行ける?」

「え、うん」

「もし良かったら、一本分だけ付き合ってくれない? 勿論、時間があったらだけど」

田代くんはいつもの態度から分かるように割とドライなタイプで、こんな風に誘われたことなんてない。

それに、家に帰りたかったはずなのに、別の話で頭を冷やしたい気もして自分でもよく分からなかった。

けど……


「あんまり遅くなるのも嫌だから、一本分だけだよ」


少しまだ動揺していたのかもしれない。

いつもなら、はじめに「一本分だけだよ」と釘を刺すことも苦手なのに。

つい言葉が溢れた私に、何故か田代くんは「了解。ありがと」と嬉しそうに笑った。