甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。

食事を終えて、店を出る。

「奏葉、じゃあそこのコンビニで……」

その時、時哉さんの言葉を遮(さえぎ)るように時哉さんのスマホが鳴った。

その電話の着信音を聞くだけで、どこかこの後の展開は予想出来る気がした。

時哉さんが小声で「ごめん」と言って、電話に出る。

所々、聞こえる時哉さんの声だけでも相手が職場の人からだと分かった。

電話を終えた時哉さんの顔は本当にただただ私に申し訳ないという顔だった。


「奏葉。本当に申し訳ないんだけど、呼び出しがかかって、それで……」


「大丈夫ですよ！　もう、料理も満喫しましたし！　あとはコンビニだけだったんですから。また今度、奢らせて下さい」


私の精一杯の強がりを聞いて、急いでいるはずの時哉さんが一言だけ言葉を発した。





「ごめん、奏葉。許可出して。触れたい」





「え？」





意味が分からないまま、気づけば、おでこに柔らかい感触が当たった。

それが時哉さんの口だと気づいて、一瞬で頭がパンクする。






「俺にはもっと素直になって。どれだけずる賢くなってもいいから、奏葉が言葉を我慢する方が嫌。……それと次会った時、告白するから」






「っ……！？」






それだけ言って、時哉さんはすぐに急足で職場に向かってしまう。