お菓子作り部、唯一の部員、いや料理上手な澪くんが作ったショートケーキ、ぜひとも食べたいっ!

 澪くんは小さくため息をつくと、「わかった」と言って、私にショートケーキの乗ったお皿を渡してくれた。

「まぁ、…食べてみたら」

「ありがとうっ!」

 私は受け取ったお皿を机に置いて、手を合わせた。

「いただきますっ!」

 一口口に入れた瞬間、ほどよいクリームの甘みが広がって、気がつくと私は涙を流していた。

 澪くんは驚いたように目を丸くする。

「ち、ちとせ?どうした?」

 私はぽろぽろと涙をこぼしながら、そのケーキの味を噛みしめた。

「…同じなの…」

「え?」

「小さい頃に大好きだったケーキ屋さんのケーキと、同じ味がするの」

 澪くんが作ったケーキは、私が大好きだったケーキ屋さん、私に夢をくれたケーキ屋さんのケーキと、同じ味がしたの。

 今はもうなくなってしまったケーキ屋さんだけれど、私はその味をずっと憶えてる。

 思い出の中で、いつだって私の心を温かくしてくれるんだ。

「おいしい…」

「そうか…」

「ごめんね!急に泣いちゃって!あまりに大好きなケーキ屋さんのケーキに味がそっくりだったから!つい懐かしくて…」

「…そのケーキ屋さん、うちなんだよ」

「え?」

 澪くんの言葉がうまく理解できなくて、私はきょとんと澪くんを見つめた。

「ちとせが探してたケーキ屋さん。うちの両親がやってたケーキ屋だから」

「えええっ!!」

 驚きすぎてフォークを落としそうになる私。