ひとりきりの部活動であるお菓子作り部に遭遇するため、私はあらゆる時間に第二家庭科室を訪れていた。

 この前一度だけクッキーの香りがした家庭科室だけれど、以降はなかなか活動していたであろう痕跡をつかめずにいた。

 そんな日々が続く中。

 その日第二家庭科室に近付くと、かすかに甘い香りがした。

 この匂いって……!

 今日こそぜったいに活動してるっ!

 そう確信して私は勢いよく扉を開けた。

「あの!!」

 思い切り声を掛けたはいいけれど、しかしそこにはだれもいなかった。

「あれ…?…ん?」

 けれど、机の上にはピンクのエプロンと、かわいらしいぬいぐるみが置いてあった。

 ぬいぐるみは大きな星を抱いているくまさん。

 そのくまさんの目に前に、切り分けられたショートケーキが置かれていた。

 つやつやとした大きな苺が乗っていて、すっごくおいしそう!

 今すぐにでも食べられるような準備ばっちりと言う感じの中、ぬいぐるみがいるだけで人がいない。

「作ったひとは、どこに行っちゃったんだろう?」

 私が首を傾げていると、第二家庭科室の扉がガラッと音を立てた。

 私が音の方を振り返ると、そこにいたのは。

「え、澪くん?」

「ちとせ?」

 そこにいたのは澪くんだった。

「澪くんがどうしてここに?」

「え、と…」

「見て!澪くん!これ、ぜったいお菓子作り部の子が作ったケーキだよ!」

 調理した器具が洗い場に置かれていて、片付けはまだのようだった。

 作ってさっそく食べようとしたんだと思う!