たしかに雪城先輩は途中で寝ちゃいそうだし、祐希くんは澪くん相手ならにぎやかにおしゃべりしそう。兎山くんにいたっては、星を見るよりも望遠鏡のスケッチに興味を向けそうだもんね。
「そうかも」と私が笑うと、「だろ?」と言って澪くんも苦笑した。
「こうして静かに月や星を眺めるのが好きなんだ。心が落ち着くから」
「そうだったんだ」
「ちとせも覗いてみる?望遠鏡」
「いいの?」
澪くんにうながされて、私は大きな望遠鏡を覗きこんだ。
そこにはまん丸な大きなお月様が映し出されていた。
「すごい!お月様の模様がきれいに見える!本当にうさぎさんが餅つきしてるんだ!」
興奮気味に話す私に、澪くんが補足する。
「まぁ、なにに見えるかは諸説あるみたいだけど、日本ではうさぎが一般的だな」
「望遠鏡すごいね!こんなにきれいに見えるんだ!」
「他の星も見てみる?」
「うん!」
澪くんは望遠鏡を動かすと、星にピントを合わせはじめた。
「澪くんは、将来星関連のお仕事に就くの?天文学者とか?」
私の質問に、澪くんは首を振る。
「そういうわけじゃない。ただ星を見るのが好きなだけ」
「そっか」
澪くんが白衣を着て眼鏡をかけて研究しているところを想像して、すっごく似合うだろうなぁと私はひとりでにんまりした。
「ちとせ、なんか変な想像してないか?」
「まさかまさか!」
私は顔の前で大きく手を振った。
本当は想像してたけど、澪くんには内緒だ。
澪くんは疑わしげに私を見ていたけれど、ピントを合わせ終わったのか、望遠鏡の前へと私を促した。



