「んん~っ!」

 自室へと戻った私は、宿題を終わらせて大きく伸びをした。

「なんだかこの時間にひとり、って久しぶりかも」

 いつもなら雪城先輩の枕になっているか、祐希くんとおしゃべりしながら宿題をしているか、兎山くんの絵のモデルになってなにかポーズを取っているか、が私の夜の過ごし方だった。

「澪くんはどうしてるかな?」

 いつもどんなふうに夜を過ごしているのかわからない澪くん。

 たまに私が焼いたケーキをいっしょに食べたりはするけれど、それ以外はどうしているんだろう?

 のども乾いてしまったし、お水を飲むついでに私は談話室へと降りた。

「あら、だれもいないや」

 談話室を覗いてみたけれど、今日はもうみんな自室に戻ったのかな、だれもいなかった。

 談話室の大きな窓から月明りが差し込んでいて、私はそれにつられてバルコニーへと飛び出した。

「きれい……!!」

 ちょうど満月。まん丸のお月様が、夜空を明るく照らしていた。

「なんか今日のお月様、いつもより大きく見えるかも!」

「スーパームーンだからな」

 急に真横から声が聞こえてきて、私は飛び上がった。

「わあっ!?!?」

 慌てて声のした方を見ると、そこにいたのは澪くんだった。

「み、澪く、!?!?」

 驚いた私はまた声を上げそうになって、澪くんに口を塞がれた。

 しーっと人差し指を口元にあてる澪くん。

「おーい、だれかいる~?」

 談話室の入口の方から雪城先輩の声がして、何故か澪くんは私を雪城先輩から隠すように抱きしめた。