その日の晩のこと。
「ええっ!!これ、本当にうさちゃんが描いたの!?」
「すげー!」
「漫画の絵でも相変わらずきれいだな」
兎山くんの描いた漫画を、雪城先輩、祐希くん、澪くんに見てもらった。
三人は驚いたように兎山くんの描いた漫画を読んでいて、楽しそうにあーだこーだ話している。
「慶次郎が漫画描いてるなんて、知らなかった」
「ねー!こんなにおもしろい漫画、どうして早く見せてくれなかったのかなー?」
兎山くんは3人の反応が意外だったのか、少し照れくさそうにしている。
「だって、絵画の天才の僕が漫画描いてるなんて、おかしく思うでしょ?」
兎山くんの言葉に、3人はきょとんとして首を振った。
「そんなこと思うわけないよ~」
「そうだよ!漫画描けるなんてすげーよ!」
「俺は漫画には詳しくないけど、読みやすいしおもしろいと思う」
「え、…本当に……?」
3人の好意的な反応に、兎山くんは思い切ったようにこう口にした。
「僕、漫画家になるのが夢なんだ!ぜったいにおもしろいものを描いて見せるから、楽しみにしててよねっ!」
その兎山くんの強気な宣言に、私達はおおーっ!と手をぱちぱちと叩いた。
兎山くんは私にだけ聞こえるように、ぼそりと呟いた。
「ありがと…花宮先輩。ちょっとは、その、感謝してる…。これからも僕の傍にいてくれてもいいけど?」
素直じゃない兎山くんの言葉に、兎山くんらしいなと思いながら私はうなずいた。
「うん!」
人の夢は人それぞれ。
だれかに決められたものじゃなくて、自分のやりたいこと、自分のしたいこと、夢に向かって、私もがんばろうって思えたんだ。



