「兎山くんはどうして学園と寮ではキャラが違うの?」

 私は思っていたことをはっきりと訊いてみた。

 雪城先輩や祐希くんは、自然とそうなってしまっているみたいだったけれど、兎山くんは明らかに自分で学園内のキャラクターを作っているように感じる。

 なにか意味があるのかな?

「だって、ぼく見た目がかわいいでしょ?みんなが想像してるぼくを演じてあげた方が、みんな喜ぶし、実際のぼくより、ちょっとかわいらしくておどおどしてた方が、印象いいから」

「な、なるほど…でも大変じゃない?」

「別に。もう慣れたから。自分でも性格きついのわかってるし」

 兎山くんはまだ一年生なのに、周りをしっかり見て理解して、自分の立場を位置づけしてるんだ。

 それって少し苦しくないかな?ってちょっと心配になった。

「そんなことより、花宮先輩にお願いがあるんだけど、いい?」

「あ、うん!」

 そういえばそう言われて連れてこられたんだった。

 私にできることかな?

 兎山くんは私の目をしっかり見つめてこう言った。

「花宮先輩に、絵のモデルになってほしいんだけど」

「ええっ!モデル!?」

「そう。今描いてる漫画、花宮先輩みたいに頭が甘々のお花畑の女の子がヒロインなんだよね。あんたにそっくりだから、観察させてほしいんだけど、いい?」

「う、うん?私でお役に立てるなら?」

 ほめられているのかけなされているのかわからないけれど、私で役に立てるならがんばりたい。

「兎山くんの夢のために、私も協力できるなら!」

 そう言うと兎山くんは少し照れくさそうに視線を外した。

「…ありがと…」

「うん!」