これなら、二人の仲を引き裂こうと思う人は現れないだろう。

 あとは私が絶望して崩れ落ちるようにへたり込めば完璧だ。

「そんな……哩都……」

 今にも泣きそうな震える声を出して、すがりつくように手を伸ばす。
 それを辰見くんは避けて、逆に一叶ちゃんの方を抱く。私よりも、一叶ちゃんが大事だと態度でも示した。

 ショックを受けた――ように見える演技をした私は、そのまま地面にへたり込もうとしたんだけれど。


「おい、ちょっと待てよ」


 とても聞き覚えのある声が、場の流れを停止させた。

 私の耳と心に心地よいその声の主は、近づいてくると私の肩を抱く。

「っ!?」

 とつぜんの行動に、私は演技も忘れて目をまん丸に見開く。
 私に演技を忘れさせてしまう彼は、伊達眼鏡を外して周りにも聞こえるような声でとんでもないことを口にした。

「コイツはもう哩都のことなんとも思ってねぇよ。今はもう、俺の彼女だから」

 驚きに、私は目玉が落ちちゃうんじゃないかってくらい見開く。

 でも、心は透里の発した『俺の彼女』という甘い響きをよろこんでる。