「透里も先に行って。一叶ちゃんたちをちゃんと守らなきゃ」

 廃工場からは無事に救出できたけれど、外にも不良たちの仲間がいるかもしれない。

 ちゃんと安全なところに行くまで守らないと。
 守るなら透里の方が適任だし、複数の人を翻弄して足止めするなら私とマロの方が得意だ。
 適材適所だよね、と思ったんだけど。

「大丈夫だよ。すぐ近くに創士さんが待機してるから」
「え? でも……」

 創士さんがいるのだとしても、ちゃんと引き渡すのが護衛なんじゃないかな?
 透里だってそれくらいわかってるはず。なのにどうして……?

 疑問に思って透里の方を見ると、軽く視線をよこした彼は口角を上げて告げた。

「それに、好きな子を一人だけ置いて行けるわけないだろ?」
「へ?」

 好きな、子? それって。

「透里、それ――」
「邪魔だお前らぁ!」

 透里の言葉の意味を問い質そうとしたけれど、不良たちがまたナイフを手に襲いかかってきた。
 それに対応している間に、うやむやになってしまう。

 でもでも、『好きな子を一人だけ置いて行けるわけない』ってことは……もしかして!?

 イヤでも期待してしまう心は、戦闘中だっていうのにずっとドキドキしていた。