「大丈夫か? 二人とも」

 不良のナイフの攻撃を受けながら、透里は余裕すら見せる顔で聞いてきた。

 日本刀を使いこなす透里は私より対面での戦闘に長けている。強さそのものも大人顔負けだから、その余裕もわかる。

「私は大丈夫。……透里が来てくれたおかげでケガ一つないよ」

 余裕そうな透里に安心してホッと息をついて答えると、一叶ちゃんも「は、はい!」とあわてて返事をした。

「ならよかった。外には創士さんも待機してる。さっさと突破するぞ」
「了解!」

 透里が来てくれた。
 それだけで無敵になった気分になる。
 単純な戦闘では透里の方が強いから、ということもあるけれど、透里がそばにいるというだけで心が強くなる。

 大好きな透里は仕事の上でも最高のパートナーなんだ。

 改めてそれを実感した私は、首からさげている犬笛を取り出し吹いた。
 透里が来たってことは、マロも来ているはずだから。

「ワン!」

 人の耳には聞こえない笛の音に反応して、入り口の方から黒い犬が入ってきた。
 黒い柴犬のマロは、そのまま私の指示を理解して不良たちの周りを走り回った。

「うおっ!? なんだこの犬!」

 足元を走り回られて、思うように移動できない不良たち。
 そこへ透里がつっこみ、中央に道を作った。

「一叶ちゃん、行くよ!」

 呼びかけて、一叶ちゃんの腕を引く。

「うん!」

 一叶ちゃんは迷うことなくついてきてくれる。