「お前は……鴇野? なんで、お前が?」
「なんで、ですか? そうですね……最初から(・・・・)、私は一叶ちゃんを守るためにいたんですよ」

 邑本先輩の疑問に、私は少し考えてから挑発するように笑みを浮かべて答える。

 【夜天光】のことは話せないし、話せたとしても詳しく説明してあげる必要もない。だから簡潔に説明したんだけれど、さすがにこれだけじゃあ意味がわからなかったみたい。

「なに言ってるんだ? 何度も一叶をおとしめたりいじめていたやつが」

 理解出来なくて眉をよせる邑本先輩だったけれど、周りの不良たちにとっては理由なんて関係なかったらしい。
 困惑する邑本先輩を押しのけて、にらみを利かせた目をこちらに向けていた。

「女のくせに、生意気なことするじゃねぇか。武器も持ってるみたいだし、こっちも本気で相手してやってもいいってことだよなぁ!?」

 怒鳴り声と同時に、不良たちは携帯していたらしいナイフを一斉に取り出す。
 折りたたみ式のナイフや、サバイバルナイフまで様々だ。

 状況を理解して、私は浅くなる息を一度大きく吸った。

 私の戦い方は、マロと協力して素早さを活かして敵を翻弄しながら倒していくスタイルだ。
 いくら相手がプロでもなんでもないただの不良だといっても、この人数に一叶ちゃんを守りながらとなると厳しいかもしれない。
 まして、今はマロがいないから。

 でも、マロが到着するまで不良たちが待ってくれるわけがない。