ストーカーとはいえ、一叶ちゃんに好意があるからそういうことをしてたんだもん。さすがに暴力までは――。

「そうだな。あ、でも顔は止めてくれよ?」

 はあぁ!?

 私の予想に反して簡単に一叶ちゃんを殴っていいなんて許可を出す邑本先輩が信じられない。
 一叶ちゃんを苦しめていた時点で許すつもりはなかったけれど、暴力まで許可するなんて……容赦する必要はないみたいだね。

 私は深く息を吸うと勢いよく吐き出し、同時に地を蹴り一叶ちゃんの元へ向かった。
 邑本先輩の許可を得て一叶ちゃんに手を伸ばしていた不良の一人をそのままの勢いで蹴り倒し、軽く飛び上がると体を回転させて一叶ちゃんの前に着地した。

 一叶ちゃんを背に守るように、邑本先輩たちと相対してクナイを構える。

「なっなんだ!?」
「あ、あやめちゃんっ!」

 騒然となる中、一叶ちゃんは今にも泣きそうな声で私を呼ぶ。

 その様子にもっと早く出てくればよかったと思った。
 確実に助けるためにギリギリまで出ない選択をしたことを間違っていたとは思わないけれど、申し訳なさはどうしたって感じてしまうから。

 せめてちゃんと守り通すから! と気を引き締めていると、目の前の邑本先輩が困惑の表情を浮かべた。