「ああ、そうだよ! お前のクラスメイトに指示して、お前をいじめさせた。辰見に相応しくないってウワサも俺が流した! 最近だと婚約発表があるってウワサもか? そういうウワサを流せばあの鴇野とかいう女子が黙ってないと思ったからな!」

 なんと、もともとあった【辰見くんに一叶ちゃんは相応しくない】ってウワサも邑本先輩が流したウワサだったなんて。
 婚約発表のウワサも邑本先輩だったんだ。

 まあ、本当に婚約発表するとは思っていなかったみたいだけれど。

「全部お前に知らしめるためだ! 一叶、お前には俺だけなんだ。俺しかいないんだ。わかれよ!」
「っ!」

 言葉を重ねるごとに乱暴になっていく邑本先輩の口調を、一叶ちゃんは身を強ばらせて聞いている。
 そんな一叶ちゃんがかわいそうで、今すぐ助けたい気持ちはあるけれど……。

 でも、確実に助け出すにはマロと透里の武器が到着してからの方がいい。直接的な被害がないうちは、待機だ。

 そう思っていたんだけれど……。

「おいおい、もめてるなぁ? その子、俺たちがしつけてやろうか?」

 少し離れた場所で自由にくつろいでいた不良たちが、邑本先輩の大声を聞いて一叶ちゃんの方へ近づいていく。

「一発殴ってやれば大人しくなるだろ?」

 ニヤニヤと笑いながらとんでもないことを言う不良に、私は今すぐ飛び出して蹴り飛ばしてやりたくなる。

 でも、まだダメ。

 邑本先輩が断れば一叶ちゃんは殴られたりなんてしないはずだから。