シークレット・ミッション~なりきり悪女の恋愛事情~

「いったい、鴇野さんと木虎くんって何者なんだ? 辰見くんは知ってるんだよね?」
「うん、一応知ってるんだけど……」

 一応私たちが【夜天光】エージェントだと知っている辰見くんも戸惑っている様子に、ついクスッと笑ってしまう。たしかに辰見くんの前では戦っているところを見せたことなかったもんね。
 本当に戦えるのかどうかなんてわからないか。

「二人とも」

 戸惑う二人に呼びかけた私は、振り返るようにして人差し指を唇に寄せた。
 そして、ニッと口角を上げる。

「女の子のヒミツを詮索しちゃダメだよ」

 言い残して、私は今度こそ倉庫の方へと向かった。



 倉庫の中は真っ昼間だっていうのに薄暗い。
 忍び込むには助かるけれど、空気も暗く淀んでいるみたいであまりいい環境とは言えない。

 そんな中に一点だけ明るい場所があって、一叶ちゃんたちがどこにいるのかはすぐにわかった。

 気づかれないように近づいて様子をうかがうと、一叶ちゃんと邑本先輩以外にも人の姿が見える。
 目立つ色に髪を染めている人や、ピアスをたくさんつけている人たちが十数人。きっとあれが邑本先輩が仲良くしてるっていう不良たちなんだろう。
 彼らは一叶ちゃんたちとは少し離れたところに集まって、思い思いにすごしている。