シークレット・ミッション~なりきり悪女の恋愛事情~

「そっ、か……。えっと、じゃあ今まで通りでいいってことか?」

 だったらなんで困るなんて言ったんだ? なんて言わずに、私の謝罪を受け入れてくれた透里は、ちょっと耳を赤くさせながら確認してきた。
 透里の様子に、私もいまさらだけど恥ずかしさが湧き上がってくる。

「う、うん。その、さっきみたいに心配してもらえるとうれしいし。まったく気にかけてもらえないと……その、寂しいからさ」
「ってことは、俺があまり近づかないでいた間、あやめは寂しかったのか?」
「うっ!」

 図星を突かれて言葉に詰まった。

 たしかにそうだけれど、素直にうなずくのは恥ずかしい。
 透里の表情も、どこかからかっているようにも見えるから、なおさら言いづらい。

 でも、寂しくないって言ったら、そんなに気にかけなくていいか、と思われそうだったから……。

「っ、そうだよ! 寂しかったの! だから、またかまってくれてもいいよ?」

 ちょっと子どもっぽい言い方になっちゃったけれど、正直に伝える。

 恥ずかしさから『またかまってくれてもいいよ?』なんてひねくれた言葉も付け加えちゃったけれど。
 でも、透里は軽く笑って私の全部を受け入れてくれた。

 ポン、と私の頭の上に手を乗せて、そのままなでてくれる。

「そっか……じゃあ、もっとかまわないとな」

 今まで見たなかで、一番優しい透里の笑顔。
 言葉やその仕草。太陽が高く昇っているような晴れやかな空色の目に、私の胸の鼓動が大きく鳴った。