シークレット・ミッション~なりきり悪女の恋愛事情~

 自信に満ちた笑みがちょっと男らしくてかっこよくて、抑えるヒマもなく胸の鼓動がドキッと跳ねた。
 って、ダメダメ! 学園にいる間は仕事中でもあるんだから、気を引き締めなきゃ!

 またしても恋愛感情が任務の邪魔になりそうで、早く透里とはなれないとって思う。

「えっと、とにかく状況はわかったよ。私はこのまま軽く手当てして次の授業からまた出るから、二人は戻って」
「いや、でもそのケガ自分で手当てするの難しいんじゃないかな?」

 辰見くんの言う通り、片手で手当てすることになるから難しいのは確かだ。でも難しいだけで出来ないわけじゃない。
 大丈夫だよ、と返そうとしたけれど、その言葉は私じゃなくて透里の口から出てきた。

「大丈夫だよ、俺が手当てしておくから。辰見は津嶋さんのそばにいた方がいい」
「そう? ……わかった、じゃあ僕は戻るね」
「え……?」

 私がなにか言う前に、辰見くんは保健室から出て行ってしまう。

 いや、たしかに辰見くんには一叶ちゃんの側にいて欲しいけれど……でも、これじゃあ透里と二人っきりになっちゃうじゃない!
 最近避けていたのに……気まずいよ。

 内心アワアワしていると、透里が私に向き直る。

「まずは手当てだな。そこ座ってろよ」
「う、うん」

 透里の方は特に気にしている様子も見せず、手当てのために消毒液や絆創膏を棚から取り出した。