「か、勝手にじゃないだろ?」
弱々しい声だけれど、周囲にも聞こえるように発せられた言葉。
その声の主は、クラスの中でも陰が薄い眼鏡の男の子だった。名前は確か――松田剛。はじめて見たとき、完全に名前負けだなぁって思ったのを覚えてる。
「僕は見てたよ! 鴇野さんが、津嶋さんに足を掛けたの」
普段は大人しいけれど、勇気を出して声を上げた。って感じみたいだね。
彼は一叶ちゃんにほのかな恋心を抱いているのか、ときどき彼女を見つめているときがある。だからきっと今も本当に見られてたんだろうな。
でも、悪女としてはここで簡単にあやまるなんてあり得ない。
「本当に? 近くにいたからそう見えていただけじゃないの?」
転んだせいで乱れた髪をなでつけてから、松田くんを冷たく見すえて長い髪を払った。
「見間違いなんじゃないの?」
ついでに、小馬鹿にするような笑いを口元に浮かべると、取り巻きの三人が援護射撃のように松田くんを非難する。
「そうよ! 証拠もないのに変なこと言わないでちょうだい!」
「大体あやめさんの方が下敷きになって痛い思いをしたのに!」
「むしろ津嶋さんがわざと巻き込んだんじゃない!?」
三人の勢いに松田くんはタジタジになって、なにか言い返そうとしつつも言葉が出ないのか口をパクパクさせているだけだった。
誰も言い返してこないことでいい気になったのか、三人はさらに口撃をし始める。
でもさすがにそろそろ収集をつけないとな、と思っていると、一叶ちゃんにいつの間にか寄りそっていた辰見くんがなにかに気づいたように私に近づいてきた。
弱々しい声だけれど、周囲にも聞こえるように発せられた言葉。
その声の主は、クラスの中でも陰が薄い眼鏡の男の子だった。名前は確か――松田剛。はじめて見たとき、完全に名前負けだなぁって思ったのを覚えてる。
「僕は見てたよ! 鴇野さんが、津嶋さんに足を掛けたの」
普段は大人しいけれど、勇気を出して声を上げた。って感じみたいだね。
彼は一叶ちゃんにほのかな恋心を抱いているのか、ときどき彼女を見つめているときがある。だからきっと今も本当に見られてたんだろうな。
でも、悪女としてはここで簡単にあやまるなんてあり得ない。
「本当に? 近くにいたからそう見えていただけじゃないの?」
転んだせいで乱れた髪をなでつけてから、松田くんを冷たく見すえて長い髪を払った。
「見間違いなんじゃないの?」
ついでに、小馬鹿にするような笑いを口元に浮かべると、取り巻きの三人が援護射撃のように松田くんを非難する。
「そうよ! 証拠もないのに変なこと言わないでちょうだい!」
「大体あやめさんの方が下敷きになって痛い思いをしたのに!」
「むしろ津嶋さんがわざと巻き込んだんじゃない!?」
三人の勢いに松田くんはタジタジになって、なにか言い返そうとしつつも言葉が出ないのか口をパクパクさせているだけだった。
誰も言い返してこないことでいい気になったのか、三人はさらに口撃をし始める。
でもさすがにそろそろ収集をつけないとな、と思っていると、一叶ちゃんにいつの間にか寄りそっていた辰見くんがなにかに気づいたように私に近づいてきた。



