シークレット・ミッション～なりきり悪女の恋愛事情～

「いったーい！　なにするのよ！？」
「え？　え？　あ――」

　いきなり切り替えたから一叶ちゃんはとまどっちゃった。
　ごめんね。でも私が一叶ちゃんを気づかってることを周りに知られるわけにはいかないから。

「私を巻き込まないでくれる！？」
「ご、ごめんなさい！」

　私の上からどいてあやまる一叶ちゃん。

　そうしている間に、周りには測定を終えたクラスメイトたちが集まってきていた。
　そんな中から、アイ、マイ、ミチの三人があわてた様子で近づいてくる。

「あやめさん！　大丈夫ですか！？」
「津嶋さん！　あなたよりにもよってあやめさんを巻き込むなんて！」
「転ぶなら一人で転びなさいよ！」

　次々と一叶ちゃんを非難する三人に、責められている一叶ちゃんは肩を縮ませて「ごめんなさい」とひたすらあやまっていた。
　そこへ何事かと辰見くんと先生が連れだって来る。

「一叶、あやめ、なにがあったんだ？」
「どうした？　測定はまだ終わってないぞ？」

　様子を見に来た二人に、真っ先に声を上げたのは取り巻き三人だ。

「津嶋さんが勝手に転んだだけです！」
「それなのにあやめさんを巻き込んで」
「あやめさんがかわいそう！」

　私が一叶ちゃんに足を掛けたことを知っているはずなのに、まるでそんなこと話してすらいなかったとばかりに私を哀れむ三人。
　この子たちこそある意味演技上手いよ……。

　なんてあきれながら立ち上がると、珍しく第三者から声が上がった。