シークレット・ミッション~なりきり悪女の恋愛事情~

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 ピー!

 と、スタートの合図であるホイッスルの音がグラウンドに響く。

 今は体力測定の五十メートル走真っ最中だ。
 私は後の方だからって、ゴール地点で記録係をしている。

 正直助かったって思ったよ。同じ年くらいの子たちがどれくらいの早さで走るのか先に知ることができるから。
 だって、普通じゃない訓練を受けていた私は絶対みんなより早いと思うし。

 体力も、マロと一時間くらい全力で走っても平気なくらいだからなぁ。

 記録を書き留めながら、みんなは八秒から十秒くらいなんだな、って考えている私の後ろでは、取り巻きである三人が真面目に授業を受けずおしゃべりばかりしていた。

「体力測定とかメンドーだよねー」
「あたし足遅いし、やってらんないんだけどー」
「てか早く日陰行きたい。日差し強すぎー」
「……」

 後ろで話しているだけなら記録手伝ってよ!

 と、文句を言いたいのをこらえる。

 でもダメだ。この子たちちゃんと測るつもりなんてなくて、いい加減に書いちゃおうとか言ってたし。一叶ちゃんとか、他にも足が速い子はむかつくから秒数多めに書いちゃおうとか言ってたし。
 後でバレるって思わないのかな?

 私が来る前から一叶ちゃんをいじめていたっぽい彼女たち。それを知ってからどうしようもない子たちだとは思ってたけど……。

 この子たち、一度本気で痛い目みなきゃダメなんじゃないかな!?

 このまま行ったらとんでもないことをしでかしそうで、ちょっと怖い。
 なんて、ある意味取り巻き三人の将来を案じているうちに一叶ちゃんの番になった。
 すると、それに気づいたらしい三人の笑い声が聞こえてくる。