シークレット・ミッション~なりきり悪女の恋愛事情~

 気持ちに蓋を――なんて言っている余裕もなくなって、心臓はバクバク鳴っているし、顔が熱い。
 近すぎて苦しいくらい胸がぎゅーっとなっているのに、透里は答えないとはなれてくれそうにない。

 私は近づいてくる透里からはなれるように反対側に傾いて、ポソポソと問いに答えた。

「私の好みは……気安く接することができて、なんだかんだ私に優しい人、かな?」

 透里のことだけど、これでバレるわけないよね。
 透里、優しいときはとことん優しいけれど、今はちょっといじわるだし。

 なんて考えていたのに――。

「それって俺のこと?」
「っ!? な、なんでそうなるの!? あと近いよ!?」

 せっかく開いた距離をまたつめられて、迫られる。

 こんな風にされたら、心臓が破裂しちゃうよぉ!

「あやめと一番気安く接してるのって、俺だろ?」

 そっちかぁーーー!
 優しいって部分よりそっちで自分かもって思ったの!?
 いや、間違ってないんだけど、ごまかそうとしたのに意味ないじゃない!

「なぁ、俺ってあやめの好みなのか?」

 自分の失敗を反省するヒマもなく、答えを求めてくる透里に頭が溶かされちゃいそう。