私はさっきまで透里がいた場所をチラッと見て、いなくなっていることを確認してから大きく息を吐き話した。
「……親がいなくたって、素敵な人になれるのに」
やっとのことで出した声は、辰見くんに答えたというよりはひとり言に近い。
だって、この怒りは一叶ちゃんを思ってのものじゃないから。
「親が? ああ、そういうことを言われたのか」
ちゃんとした答えではなかったけれど、辰見くんは察してくれたみたい。
「それなら一叶がいなくなったのもわかるな。彼女は人に泣いているところを見られたくないらしいから……心配かけたくないって」
「そうなんだ……一叶ちゃんもやさしいんだね」
「一叶も?」
ポツリとつぶやいた同意の言葉だったけれど、私が無意識に別の人のことを思っていたことを辰見くんは気づいた。
「ってことは、さっきから鴇野さんが言ってるのは別の人のことなんだね?」
「あ……うん」
言い当てられて一瞬おどろいたけれど、今の私の言い方だとバレて当然か。
そう、取り巻きたちの『片親がいない』っていう言葉で私が怒りを覚えたのは、透里のことを思ったからだ。
透里は、両親がいないから。
「……親がいなくたって、素敵な人になれるのに」
やっとのことで出した声は、辰見くんに答えたというよりはひとり言に近い。
だって、この怒りは一叶ちゃんを思ってのものじゃないから。
「親が? ああ、そういうことを言われたのか」
ちゃんとした答えではなかったけれど、辰見くんは察してくれたみたい。
「それなら一叶がいなくなったのもわかるな。彼女は人に泣いているところを見られたくないらしいから……心配かけたくないって」
「そうなんだ……一叶ちゃんもやさしいんだね」
「一叶も?」
ポツリとつぶやいた同意の言葉だったけれど、私が無意識に別の人のことを思っていたことを辰見くんは気づいた。
「ってことは、さっきから鴇野さんが言ってるのは別の人のことなんだね?」
「あ……うん」
言い当てられて一瞬おどろいたけれど、今の私の言い方だとバレて当然か。
そう、取り巻きたちの『片親がいない』っていう言葉で私が怒りを覚えたのは、透里のことを思ったからだ。
透里は、両親がいないから。



