シークレット・ミッション~なりきり悪女の恋愛事情~

 本当は耐えるだけじゃなくて、三人が言葉を止めるようなことを言わなきゃならなかったんだろうけれど、私はのどの奥から吐き出してしまいそうな怒りを抑えるのが精一杯で……。
 だから、アイたちのさらに一叶ちゃんを傷つける言葉を止めることができなかった。

「しかももう片方の親も会社を倒産させちゃうような無能じゃない」
「そんな親しかいないんじゃあ津嶋さんも無能にしかならないじゃない?」
「やっぱり辰見くんには相応しくないよねぇー」

 キャハハ! と耳障りな声に同調することはできなかった。
 でも、今の私は悪女だから――。

「本当に。身の程を知って別れればいいのに」

 と、一叶ちゃんを見下しながら吐き捨てた。
 追い打ちをかけられた一叶ちゃんは、うつむいたままビクリと肩をふるわせる。

 そこに辰見くんの声が響いた。

「なにしてるんだ!?」

 かけ足でもどってきた辰見くんは、すぐに私と一叶ちゃんの間に入る。
 でも、ヒーローの登場としては少し遅かったみたいだ。