シークレット・ミッション～なりきり悪女の恋愛事情～

「……」

　私を――というより、後ろの三人を怖がっているような一叶ちゃんはうつむいてなにも答えない。

　明らかな怯えに、私は察する。
　きっと、私がいなかったときはこの三人がよく一叶ちゃんをいじめていたんだ。

　おそらくだけど、この三人は一叶ちゃんが傷つくのを見て楽しんでいるだけ。だから、私を持ち上げて矢面に立たせてるんだ。
　『辰見くんを好きだという友だちの恋を応援している』っていう大義名分のもと、これからも一叶ちゃんをいじめるために。

　ただの予測だけれど、大きく外れてはいないと思う。
　だからこそ、三人を連れてきてしまったことを強く後悔した。

　同時に、これからは私が間に入って一叶ちゃんを助けないとって思う。
　そのために、三人が出しゃばる前に言葉を続けないと、と口を開いたときだった。


　っ！　これは……。

　肌がチリチリとするような視線を感じた。今までの任務でも感じたことのある気配。
　これは明らかな敵意だ。

　私は一叶ちゃんの方を向いたまま、視線だけで周囲を探る。
　すると、私に敵意を向けてきているのは裏庭の花壇のところに集まっている人たちの誰かだとわかった。