シークレット・ミッション~なりきり悪女の恋愛事情~

 私の気持ち。
 蓋をして抑えこんでいるけれど、これはきっと恋なんだって思う。

 昔から泣き虫な私をなぐさめてくれたのは透里だった。
 教官に怒られたり、悲しい気持ちになって泣いちゃうわたしの側にいてくれて……私の泣き場所になってくれていた。

 なにか気の利いたことを言ってくれるわけじゃないけれど、ただ黙って側にいてくれる透里に安心するの。
 透里の空色の目が、私の悲しさを吸い取ってくれているかのようで……透里と一緒だと元気が出てくる。
 そうやって、いつの間にか私の中で透里の存在は大きくなって、大好きな男の子になっていた。

 でも、私は両親やその仲間たちみたいな凄腕のエージェントになるのが夢。恋にうつつをぬかしているわけにはいかないの。

「だから、ダメ。この気持ちには蓋をしなきゃ」

 これからひと月、こうして同じ家で暮らすことになっちゃったけれど、なんとか隠し通して仕事に集中しないとならない。
 数回深呼吸をして、私は覚悟を決めるように、ヒミツの箱中に丁寧にしっかりと恋心をしまい込んで鍵をかけた。