シークレット・ミッション~なりきり悪女の恋愛事情~

『でも実はあやめちゃんの悪女演技がうますぎて、本当にいじめられているのかもってちょっと思っちゃってたんだ。だから、電話してきてくれてありがとう』

「一叶ちゃん……」

 見た目だけじゃなくて心も優しい一叶ちゃんにまた感動しちゃう。
 申し訳なさとは別の意味でまた涙がにじんできたところに、とつぜんコンコンとドアをノックする音が聞こえた。

「あやめ、風呂入れるぞー?」
「っ!? と、透里? あ、わ、わかった」

 思わずビクッ! って肩を上げた私は、取り落としそうになったスマホを持ち直して小声で話しかける。

「ごめんね一叶ちゃん、そろそろ切るね。話してくれてありがとう!」
『うん、明日からもよろしくね。おやすみなさい』
「うん、おやすみなさい」

 あいさつも終えて電話を切ると、私はすぐに着替えとバスタオルを持って部屋を出た。
 あんまり遅くなると創士さんが入れないし、と思って早く出たんだけれど――。

「……あやめ、電話してたのか?」

 まさか、透里がまだ私の部屋の前にいるとは思わなくてびっくりした。

「え!? あ、えっとぉ……ちょっとね」

 電話していたことはバレているみたいだったから、誰と話していたかはごまかそうとしたんだけど……長年のつきあいである透里にはごまかしきれなかったみたい。