ドン!

 私は強く彼女の肩を押した。

「きゃあ!」

 私より背が小さくてとってもかわいい彼女は、押された勢いでそのまま床にしりもちをつく。
 そんな小動物みたいな女の子に、私は眉をつり上げて長い黒髪を片手で払った。

「いい気にならないでちょうだい!」

 強く、鋭い声でハッキリと告げる。
 敵意をこめた目でにらみつけると、彼女は今にも泣きそうな顔で私を見上げた。
 きっと周りから見たら私が女の子をいじめているように見えるだろう。
 でも、それでいいの。

 だって、そう見えるよう(・・・・・・・)に振る舞ってるんだもん。

 多くの同級生が私たちに注目する。
 そこから聞こえる声はとうぜん女の子を気づかう声ばかりだ。

「かわいそう……なんであんなことするの?」
「気ぃ強すぎ。あんなかわいい子をつきとばすとか、ひどすぎだろ」

 思った通りの反応に、つい口元に笑みが浮かんでしまう。
 でも、今の状態ならむしろ好都合。
 その笑みに人をバカにするような感情を乗せて、私は彼女に言いはなった。

「あなたなんて、そうやって這いつくばっていればいいのよ!」

 ショックを受けて強ばる女の子を見て、私は勝ち誇ったように笑う。
 そして――

 ごめんねごめんねごめんね!
 しりもちまでさせちゃって、ごめんねーーー!!

 と、心の中であやまり倒した。