「失礼しますっ、皆木です!」
そして呼ばれた会議室に入れば、何やら資料に目を通していた顧問が「ドアを閉めて」と淡々と言ってくる。
パタンと閉まった静けさ。
ハルトが入ったケースをぎゅっと握りしめると、先生の声までもが聞こえたような気がした。
「で、あなたはいつまで居るつもりなの?」
「え…?」
「体験入部はとっくに終わっているはずよ。1年目は大目に見ていたけれど、さすがに2年目は黙っていられないわ」
正式入部はしている。
用紙にサインもしたし、お母さんだってそのつもりで楽器を買ってくれたの。
部費もちゃんと払ってるよ。
この合宿費だって払って、わたしは参加しているんだ。
「たとえ初心者だとしても見込みのある生徒なら、まずはなんでもいいから楽器を持たせてみることから始める。でもあなたの1年時は基礎だけをさせたのは、そういうことよ」
察しろ、と。
おまえは見込みがないから、あえて持たせなかったんだ、と。



