あの放課後、先生と初恋。





と言ってもわたしはほとんど雑用だった。

パート練習や走り込みには同行するけれど、合奏ではノートを持って見学係。

あとは1年生に混ざって練習したりと、そんな感じだ。



「ねえ、このあとまた合奏あるって」


「うそでしょー?お風呂上がったらゆっくりしたいよ~」


「無理無理、ミーティングもあるし」



楽器を持っているときは職人さんに見えるけれど、こういう瞬間は普通の高校生なんだなあって思う。

大浴場に響く声たちは女子高生のものだった。


それは合奏とミーティングを終えて部屋に戻ってからも同じで、消灯時間が迫るなかでこんな声が聞こえる。



「やっぱり落合先輩って野球部の先輩と付き合ったのかな?」


「じゃない?甲子園決まったし。あれヤバかったよね?どこの青春マンガだよって思った~」


「で、どーなの皆木さん!」



…………へっ??

明日の予定を確認していたわたし、呼ばれた方向に顔をスッと向けた。