『やってくれたね、にいな』
「うう…っ、すみません…!!」
『だれもそんなこと頼んでないんだけど?』
「……はい。重々承知でございます」
さっそく夜、落合先輩から電話がきた。
わたしはベッドの上に正座をして、怒られる覚悟は作ったつもりだ。
けれど、スマホの先。
ふふっと嬉しそうに笑った声が聞こえてくる。
『あたし、コンクールメンバーに戻ることになった』
「……へっ」
『ソーマが先生にあたま下げたの。部員たちにも………あたま下げた。あたしのために…、バカだよあいつ』
ナイスだソーマ先輩。
惚れた女のために走るだけじゃなく、まさか頭まで下げたなんて。
『ありがとう、にいな』
涙声の落合先輩の言葉は、わたしの胸の奥にまでスウッと浸透していった。
「先輩の彼氏さんっ、最高ですね…!!」
『っ…、先輩をからかわない!合宿、ちゃんと準備してる?寝坊したら置いていくからね』
そして先輩との電話を切ったわたし、ここで気づく。
「って!!自分の恋は後回しにしてた感すごい!!先生のこともっと考えるべきなのに……!!今日もだいすきっっ」
お気に入り登録してある奇跡のツーショット。
今日も思う存分眺めてから夢のなかへ───。



