「あたしよりも全国を目指す資格がある人間はいっぱいいる。あいつが甲子園だけを追いかけてるように、
全国制覇を目指すためだけに努力してきた人間は……たくさんね。1位になるって、それくらいの覚悟じゃないとダメなんだよきっと」
つぎは鈴高の攻撃。
わたしたちはベンチから立ち上がって、楽器に息を吹きかけた。
同点のまま試合が続いている。
「おねがい、追加点とって…」
楽器から唇が離れるたびに、落合先輩は祈るようにつぶやいていた。
カキーーーン!!!
「うそっ、打った…!!ホームラン入るんじゃないのあれ!!」
「……入ったーーー!!」
勝負を決めたものは、ソーマ先輩の2ランホームランだった。
それを最後まで守り通してゲームセット。
鈴ヶ谷高校野球部、見事7年ぶりの甲子園出場。
「おめでとう!!ほんっとうに最高な試合だった…!!」
「先輩っ!すごく格好よかったです…!!めちゃめちゃ感動しましたっっ」
球場の外はわんさかわんさかと人で溢れていたが、落合先輩は「おめでとう」よりも前に学校へと戻っていった。



