「最初はさ、海しか取り柄がないような町で退屈で退屈で仕方なかった」
「ええっ、その海がいいんじゃないですか!」
「うん。今はあたしもそう思う。…けど当時のあたしはスカしてたっていうか、困った奴でね。吹奏楽は前の学校でもやってたけど………じつはあたし、そこまで得意じゃなかったの」
「…え、」
「下手くそだったんだよ、すごい。でもそれくらいしかやることがなかったから吹部に入って、暇つぶし程度に続けてたって感じかな」
下手くそ、なんて。
落合先輩には似合わない言葉すぎて信じられない。
だって鈴高のパートリーダーだよ?
あの安定感と低音を無理なく出せるスキルは、落合先輩にしか持っていないんじゃないかとまで思うものだ。
「そんなときにね、とある野球部の男に出会って。……気づいたときには応援したいって思ってた」



