あの放課後、先生と初恋。





部員たちから馬鹿にされていたわたしがソロ演奏まで任されて、たくさんの拍手を貰った。

後輩たちから嘘偽りのない「皆木先輩のようになりたいです」を貰った。




「教師をやってて本当に良かったと思えた。感動をありがとう。…にいな」




わたしだけに見せてくれた顔があった。
わたしだけに届けてくれた言葉があった。

この人もわたしのことが同じ気持ちで好きだったんだって、ちょっとだけ。



「…これだけは1個、言わせてくれるか」


「……うん」


「この3年間だけは、然よりもおまえのことを見てたのは───俺だからな」



これがわたしの初恋。

あの放課後はもう、おしまい。


先生にとってもいつか思い返したとき、こんな生徒もいたなって思い出してくれたなら。

それだけでわたしの初恋は叶ったようなものだ。



「然くんっ!!」



振り向かず走って、まっすぐ走って。




「いちばん大好き……っ」




両手を広げて待ってくれていた男の子に抱きついて、初めて言う。


やっと言うことができた。
この子にも、やっとだよ。


─────心からの感謝と大好きを。