あの放課後、先生と初恋。





「15番、私立鈴ヶ谷高等学校。指揮・綾部 一成」



お母さん、おじいちゃん。
落合先輩にソーマ先輩。

唯ちゃん、然くん。

それから………先生。


ステージから見た景色を忘れないように焼き付けて、指揮台に立った先生を見据える。



「ーーーー、」



なにを思い浮かべたかと聞かれたら、いちばん最初は毎日ひとりで練習していた放課後だ。

全体練習に参加させてもらうこともできずに、自分の楽器が持てたのも2年生になってから。


明らかに出遅れていた。
明らかに、希望なんかなかった。



『やることの意味ってのは、本人が感じることだ』


『そう簡単に諦めさせねえよ。そもそもおまえの辞書に“諦める”はないだろ』


『去年からいつも聞いてたよ、おまえの音。ずば抜けて下手くそなんだ。けど……俺は気に入ってる』



大好きだった放課後。
ぜんぶが詰まっていた、放課後。

わたしの音を聴きつづけてくれた、先生。