『然の行動は確かに正しくないことですが……間違ってはいません。間違った行動をしたのは和久井だと俺は思います。皆木の楽器を壊す必要は…どこにあったんだ』
あまり感情を表に出さない人が、分かりやすいほど怒っていたね。
然くんより前からわたしを見てくれていた人。
いつも見守ってくれていた先生。
「でもキモいって言われたの…、思ったより悲しかった…っ」
「そんなくだらないことに負けないでしょ?俺の彼女は」
「うん…っ、わたしもずっとずっと然くんの味方でいる…っ」
「………大好き」
見てくれている人に伝わっていればいい。
わたしを大切にしてくれる人の心に届けばいいんだ。
『にいな…!!修理っ、イチウラの修理っ、直してくれそうなお店っ、あって…!あったんです!!』
「うん、イチウラはやめよう然くん」
『あっ、ハルト!!とりあえず1度見させてくれって……!!』
後日、興奮ぎみの然くんからこんな電話が。
ふたりで楽器修理屋さんに行って、見てもらって。
時間はかかるけど大丈夫かい───?と、隣町にある修理屋さんから嬉しい返事が聞けた。
この楽器は、思い出は、わたしだけじゃなくて。
きっとこれから先もずっと、わたしたちの宝物なんだね。



