あの放課後、先生と初恋。





「ぜんくん……?」



教えていないのに、なんとなくでわたしの部屋を見つけて入った。

ドアを閉めてすぐ、気づいたときにはベッドに仰向けになっている。


覆ってくる影は然くんのものだ。



「あっ、え……」


「……今のはにいなが悪いよ」


「あのっ、待って…っ」


「待てないって言ったら…?…嫌いになりますか」


「な、ならない、けど…っ」


「ぜんぶ欲しいって前に言ったの……覚えてる?」



指同士が絡まって、ぎゅっと握られている。

初めて見る然くんの顔がまたひとつ。


けれども一緒にベッドに横になって、唱えるように言ってきた。



「頑張れ。…がんばれ」


「…うん」


「初めてにいな先輩の演奏を聴いたとき…俺、この応援があればどんなことでも乗り越えられる気がするって本気で思った」


「……うん、」


「それはきっと……一浦先生もだよ」



職員室ではわたしたちを庇ってくれた。

然くんが停学処分にならなかったのは、先生が和久井さんの担任と生徒指導科に強く言ってくれたからだ。