犯人は和久井 仁美で間違いないようだった。
親の問題があって吹奏楽部を退部した腹いせに、わたしに当たったのだと。
和久井さんは停学処分。
母親の問題もあり、今回のことは受験にも響くだろうと噂されている。
然くんはしばらく部活に参加できない謹慎処分と、黒崎 然に対する生徒たちからの変わったイメージが縫い付けられた。
わたしは今回の楽器の弁償代として慰謝料を学校経由で和久井さんに請求することになり、一応は丸く収まった。
「……ごめんなさい」
今日はいろいろあったからと、わたしも部活を休んだ。
大事な時期だけど、今日だけは然くんのそばに居てあげたかったから。
ずっと視線を落としながらも謝罪を繰り返す彼の手を、わたしはぎゅっと握ってマンションに帰宅する。
「そういえば初めてだよね…?家に上がったの」
「……はい。お邪魔…します」
お母さんは今日、帰りが遅くなるから先に寝てていいと言われている日。
そういう日は前日の夜に夕飯を用意してくれるから、冷蔵庫のものを温めればいいだけ。



