「名波くん、これ」
「…あ、どうも」
コンクールメンバー以外で作った、フェルトマスコット。
それぞれの楽器が切り取られていて、金賞という文字が入っている。
名波くんへのものを作ったのは、わたしだ。
「あのとき、ハッキリ言ってくれてありがとう」
「……………」
「でもまだわたし、諦めてないから」
また吹きたいと思えるようになった。
わたしが頑張る姿を見届けたいと言ってくれた人がいて、いつまで経っても格好つかないわたしを可愛いと言ってくれて、支えてくれる人がいる。
「…先輩は練習の質が悪いんですよ」
「…え…?」
「褒められたからって、そこだけを重点的にやっても片寄るだけでしょ。俺たちにしか出せない強弱やテンポ、大事にしてます?」
まるで「この前は言いすぎた」という謝罪にも聞こえた。
まくし立てるような言い方だが、しっかり聞いて理解していくと的を得ているアドバイス。



