「もしコンクールメンバーになれなかったとしても、皆木はサッカー部の応援をしてくれればいいと俺は思ってた。…わりと最初から」
「……ブラバンって、」
「ああ。おまえの音って、元気出るんだよ。一生懸命で、精いっぱいで、心に届くんだ」
膝の上に置いていた手に影が迫って、寸前のところで離れる。
「め、迷惑じゃ、ない……?」
「…ない」
悪かった───と、それは本当に小さな声だった。
「吹いて欲しい。…俺のためにも吹いて、それでどこまで行けるかだけでもやってみてくれないか」
「……わたし、彼氏がいちばん」
「…おう。じゃあ彼氏のために吹け。…おまえがここで諦めねえなら、なんだっていい」
わたしが見つめると、彼は楽器に視線を落として。
わたしがスッと戻せば、こちらに向いている視線を感じる。
並んで腰かけたベンチのあいだ、開けられてもいないメロンソーダがひとつ。
これがわたしと先生だった。



