「なら、俺が吹いていいか」
「……え?」
「1回やってみたかったんだよ。おまえが吹いてんの、ほんとは羨ましかった」
開けていいかと聞きながらも、そばに置いてあったケースを勝手に触ってくる。
街路灯に見守られて、その明かりひとつ。
「だ、だめっ」
「いいだろもう吹かねーんなら。マウスピース?だっけ。それだけでもいいんだ」
「……わたし、いつもクチ付けてるよ…?彼氏いるしっ」
「…あー、ちょっと待ってろ」
すると腰を上げた先生。
少し離れた場所にある水飲み場の蛇口をひねると、なにやらひとりでパシャパシャとやっている。
戻ってきた手には、濡らして絞られたハンカチ。
「ハルトって名前やってんだから、これくらい許せよ」
言葉は強引でも、楽器を取り出してパーツを確認する仕草は丁寧だ。



