「おいおい、きみだってサッカー部の顧問だろ?愚問じゃないか」
「努力は人一倍していると思います。もし才能と言うなら……それは俺たち指導者の力量とも言えることです」
俺は皆木にとって教師としても人間としても失格ではあるが、見えていないところでくらいは何かしてやりたい。
皆木がメンバーを外されて納得していないのは、俺もだった。
ずっとずっと頑張っていたんだあいつは。
1年のときから、2年も、ひとりで頑張ってたんだよ。
「なら指導者として聞こう。人間が自分にしかない才能をいちばん発揮する瞬間は、いつだと思う?」
「…それは、」
「それは自信が付いたときだと、80%の指導者は言うだろうな」
答えさせるつもりなど最初からないのだ。
この人は俺の意見を当てになどしていない。
自分の世界がすでに作られていて、ストーリーも結末も決まっている。
他者の意見はもはや、観客でしかないんだろう。



