「ん……っ」
これがキスなんだと、ぼやっとしているのにハッキリもしている。
心臓が口から飛び出そうで、安心もして、幸せで、柔らかさに唇から全身にかけてとろけちゃいそう……。
「んっ、…っ」
触れあうだけ。
わたしが少しでも嫌だという素振りを見せたなら、すぐに離すつもりだろうから。
大丈夫だよって応えると、もう数秒だけ合わさる。
「……ぜん、くん」
「…俺のこと大好きになったって顔、してます」
「……どうしようぅぅ…、恥ずかしくて然くんの顔、見れない…」
「…じゃあ、もう1回すれば見なくて済むかな」
「え、ひゃっ、んんっ」
手を繋いでみたかった。
こんなふうに髪を撫でられて、頬を撫でられて、キスを。
ぜんぶ叶わなかった。
叶わなかったけれど、それでいいって思える。
それがわたしの初恋だったんだ。



