「わたし、今日すごく楽しみだった。こんなこと言ったら吹奏楽部のみんなに怒られちゃうかもだけど…、今日のために合宿も頑張ってたよ」
「……俺も、楽しみでした」
下の階からナオくんとお母さんの声がする。
それ以上は食べちゃダメ!と注意しているお母さんと、うわぁぁんと泣いているナオくんの声。
初めて見た然くんの私服姿。
また新しいことを知った喜びに、トクンと心臓が跳ねる。
「…服、かわいいです。髪もいつもとちがくて……すごい、いいなって」
「…朝から頑張った甲斐があったっ」
「俺のため、ですか?」
「もちろん!」と返せば、やっと同じように抱きしめ返してくれた。
唯ちゃんが言ってたんだよ、然くん。
わたし、ちゃんと然くんのことを好きになってるんだって。
でも少し引っかかったのはね、“ちゃんと”ってところ。
だからこれだけは訂正させて、唯ちゃん。
“ちゃんと”じゃなく、“自然と”だってこと。



