「よくなってる」
「………え」
「今回の課題曲、鍵はボーンだ。ロングトーンが活きる曲でもある。…僕が言っている意味、わかれよ」
「はっ、はい!!」
わたしを使いたいから、その調子で特訓しろ。
という意味だと解釈した。
彼氏ができて浮かれすぎてしまうと、部活に悪い意味で影響されるんじゃないかと心配はあった。
しかしわたしの場合は、いい影響になってくれたみたい。
そして然くんのほうもらしく。
「毎日がんばれます。…俺には可愛い彼女が……いるので」
「………然くんかわいいっ」
「っ…!いやっ、にいな先輩のほうが可愛いですよどう考えたって!」
バカップルっぽい。
ぽいというか、見る人によってはそうなんだろう。
必ずいつも楽器を持ってくれて、歩道を歩かせてくれて、人が見えなくなると手を繋いでくる。
誰かに隠すためではなく、まだ恥ずかしさがあるからだということ。



