「完全じゃなくたっていい。まだ、って部分があっていい。…それ以上、俺がにいな先輩を笑顔にします」
いつかぜんぶひっくるめていい思い出だったって言えるようになるくらい───決定打を聞かれるならば、これだった。
うなずいて、然くんの背中に回した腕。
「……やった…、やった……!」
「…じゃあ、呼び方も変えてみる?」
「え。俺は“然くん”って呼ばれるの、めちゃくちゃ好きなんです…けど」
「あっ、然くんのほう!にいなって呼び捨てでいいよ?」
「っ…!………にい、な…………せん、ぱい、…ダメだ照れる無理だごめんなさいちょっと時間ください」
「あははっ」
あのね先生。
わたし、これから先生より然くんのことを考える頻度のほうが多くなるよ。
先生の名前より、然くんの名前を呼ぶことのほうが多くなるよ。
先生との大好きだった放課後は、どんどん過去の思い出になっていくんだ。
先生を好きになった以上に、わたしは然くんのことを好きになるね───。



