「────にいな先輩!」
わたしも帰ろうと足を進めた雑踏のなか、聞こえてきた声。
足音はだんだんクリアなものになっていき、振り返ったわたしがゴールかのように飛んできた。
理解をしていないわたしと、周りの歓声の温度差はすさまじい。
「きゃーー黒崎先輩…!?てか皆木先輩っ、だ、抱きしめられてる……!?」
「然……!おまっ、とうとうやったな…!!おまえだから許されるやつじゃねーかっ!!」
「にいな…!?!?どゆこと…!?」
ユニフォームを隠したジャージ姿の然くんに、わたしは抱きしめられている。
それまでのわたしなら賑やかでうるさかっただろうけれど、高校3年生になった今、ずいぶんと穏やかな心構えだった。
「………優勝おめでとう。シュートすごくて、格好よかった」
「先輩がいたからです。俺、にいな先輩のためだけに決めました」
「……うん」
耳元。
好きです先輩───と、わたしにだけ。



