「やだあ……っ」
「……………」
「なかったことにされるの…、やだ……っ」
ごめん、先生。
できないよそんなの。
わたしにとっては初めてで、初めての恋なの。
どんな形だとしても恋だったんだよ。
わたしはどんなに頑張ったって、あの思い出をなくすことなんかできない。
なくしたくない、やだよ。
「う…っ、……ぅぅ…っ」
しばらく先生は無言だった。
教室には、わたしのすすり泣く声だけが響く。
「…トロンボーン、吹きつづけろよ」
それだけを言って、先生は教室を出ていった。
ハルトという名前も、改名しなくちゃダメかもしれない。
心菜には個人練習させてと自ら言って、嘘をついてまで気持ちを伝えた今日。
届かなかったね────……やっぱり。
「おい然…!どこ行くんだよっ!」
「練習中だぞーーー!!」
なにかに勘づいた音が、サッカー場から聞こえてくる。
さすがエースストライカーだ。
1分もかからずに現れた。



