聞いてくれなくなった。
部活はどうだ?って、前までは先生から質問してくれたのに。
目も、合わなくなった。
マンションはお隣同士、エントランス前の自販機はわたしたちのカフェ。
先生は朝も帰りも忙しいのか、ただ単にわたしと鉢合わせたくないのか、そこでも顔を会わせることはなくなった。
「もういいか、俺は忙しい。試合も近いし……こんなことしてるなら他の生徒の進路相談に乗ってやりたい」
聞いたよ、ウワサで。
小野寺さんは留学をしたいらしく、でも成績が少し足りないから、いちばん情報を知ってるだろう先生に相談してるんだってね。
別にわざわざ言わなくたっていいよ。
わたしもう、平気だから。
今日で最後にするつもりだから、平気。
「わたし、今まで先生に伝えてた気持ち……嘘じゃないよ」
「……………」
「…うそなんかじゃ、ないんだよ」
構われるだけで嬉しかったんだ。
返事をしてくれるだけでいい、名前を呼ばれたら1日頑張れる。
それくらい先生のこと、大好きだったから。



