「あと3回勝てば優勝です。ぜったい……勝ちますから」
「……然くんごめん」
「え…?」
「わたし、然くんの気持ちには応えられない。…だからもう…、わたしに構わないで」
部活に集中したいからって、最低なことを付け足す。
まるで然くんが邪魔みたいな言い方。
でもいっそ嫌われたほうがいいのだと思う。
こんな女を好きになった自分が馬鹿だったと思ってくれるくらいに。
「これは俺の自己満足でもあるんです。俺はサッカー部としても春季大会で優勝したい気持ちは変わりません。
だから…、1位は取ります。にいな先輩は……そのときちゃんと俺を振ってください」
それからはもう付きまとわない、と。
きっぱり諦める、と。
振られるなら尚更、せめてそれまでは好きにやらせてください───やさしく言う然くんのほうがずっとずっと大人だった。
「皆木せんぱーい、ほんと明日は頼みますよー」
そのとき、校舎から出てきた名波くんがいつもの調子でついでのように言ってくる。



